【M-1グランプリ】オズワルドの掴みめっちゃ面白くなかった?

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みなさまいかがお過ごしでしょうか、豪雪婦人です。日に日に退職の日付が近づき、それと同時にこのまま行ったら確実にお金なくて死ぬな、と思っている豪雪婦人です。今までありがとうございました。

そんな些細な悩みを持ちつつ、今日の記事は漫才について。

私は普段から漫才を聴きながら眠るほどに漫才が大好きです。一応関西人であることもあってか、お笑いに関しては毎週吉本から英才教育を受けていました(ただただ新喜劇見てただけ)。

そして日本で漫才といえば避けて通れないのが「M-1グランプリ」ではないでしょうか?2021年のM−1もめちゃめちゃ面白かったです。決勝ファイナルラウンドは特に大接戦だったのではないでしょうか。インディアンスさんもオズワルドさんも、そして優勝した錦鯉さんも爆笑を掴んでいたと言う点では遜色なく、漫才を見ながら手に汗を握っていました。

その中で私が一番好きだったのがオズワルドさんです。

吉本興業公式ホームページより

ド王道のしゃべくり漫才で、勢いではなく話と構成の作り込みが面白かったです。

で、特に興味を持ったのがその「掴み

漫才において掴みと言うのは「お笑い芸人が観客を引きつけるために最初に放つ独創のギャグ」と定義されています。(コトバンクより)

つまりこの掴みこそスタートダッシュでありその後の漫才がすんなりと受け入れられるかの境目になったりするんだろうなと思っています。

話は戻しますが、オズワルドさんはこの掴みがめっちゃめちゃに面白かったんです。ここを深堀りして彼らの面白さの一端に触れてみたいと思います。

オズワルドの掴みとは

まずはそんな彼らの掴みを実際に見てもらいたいと思います。

この動画の1:23〜彼らの掴みが始まります。

以下は文字起こし。

畠「あのー、こないだ本当に参っちゃったんだけどさ」

伊「うん」

畠「友達と渋谷のハチ公前で待ち合わせしてたのね」

伊「うん」

畠「で、待っても待っても全然友達来なくて」

伊「うん」

畠「2時間ぐらい待った時に気づいたんだけど、俺友達なんていなかったんだよね」

伊「え、何々々々々!?」

畠「え、何が何が何が何が!?」

伊「お前は違う、お前は違うよ絶対!」

M-1グランプリ決勝第1ラウンド オズワルドより

圧倒的に畠中さんの頭がおかしい。

まず友達がいないのになぜハチ公前で待ち合わせすることになったのか???

で、彼は2時間の間何考えてたのか。

本当に意味がわからない。なのに面白い。

この掴みの最中に畠中さんに何が起こった?

さて。

彼らは会話の中で何が起こったのか、一つ一つ見ていきます。

まずは畠中さんの一言目。

「こないだ参っちゃった」

つまりこれは彼にとって何か不都合なことが起きたことを指します。ここから観客は彼の身に何か起こったことを予期します。次の展開が気になり始めるのです。

 

次に

「渋谷のハチ公前で待ち合わせしてた。」

そう。彼は誰かと待ち合わせしているのです。と言うことは、待ち合わせの最中に何か不都合なことが起こったと想像し始めるのです。

ここで観客はさらに次の展開を想像し始めます。例えば、何時間経っても友達が来ない、とか待ち合わせ場所を間違えたとか。どんどんと期待が膨らむのです。

 

続いて

「待っても待っても友達が来なくて」

と言うことは、彼の身に起こったことは「友達がなかなか来ない」ことです。

さあ、ここまできたら私たちが想像するのは「なぜ友達が来なかったのか

 

そしてオチは

 

「友達なんていなかった」

そんなん想像つかんがな。

と言うのがこの掴みの全容。

 

起こったことを整理すると、話の中で観客に対して期待と想像を与えています。前者は「友達がなぜ来なかったのか知ること」、後者は人によりますが例えば「友達が乗っている電車が遅延した」など。

で、このオチでは前者はきれいに解消されています。だって友達いないんだから来るわけがない。そしてそれは同時に想像を裏切っているのです。

つまり、最近の私のトレンドである「期待に応えて想像を裏切る」を達成していると言う印象です。

だからこの掴みは面白い。そう考えます。

この掴みの効果効能

さらにいえば、この掴みはただただ面白いだけでなく二つの重要なファクターを残しています。

それは「畠中さんは友達がいない」と言うことと、「畠中さんは伊藤さんに比べて頭がおかしい」と言う二つです(あくまでこの漫才の中での話ですよ)。

と言うことで、この後の漫才中に観客はずっと「畠中さんの友達に関する発言はおかしいし、伊藤さんのツッコミは正しい」と思い込みます。つまり二人の立ち位置とその後の展開を想像させ続けるのです。

例を出しましょう。

畠中さんが伊藤さんに「友達を頂戴」と言い始めた(既にヤバイ)後の3:32〜のやりとりです。

畠「君の友達の中のいらないやつを頂戴」

伊「いらない奴なんていないっつってんの」

畠「頼むよ、なんか双子の友達とかいない?」

伊「双子はダブってるからいらない、とかないから」

このやりとりも個人的にはかなり好きなのですが、これも面白いのは畠中さんの発言が頭のおかしいものと認識できるからです。畠中さんの認識である「双子はダブってる」と言うのは、世間一般的にはおかしいので伊藤さんのツッコミが有効になるのです

これが逆に世の中の一般的な解釈として「双子の友達はダブってるから友達にあげても良い」と言うものがあれば、頭がおかしいのは伊藤さんと言うことになります。そうすると、ボケとツッコミの立ち位置が変わってしまうので威力が下がることになります。

大事なのは二人の関係性の立ち位置(ボケとツッコミ、常識人と破天荒など)や観客に想像させるだけの準備をいかにしているか、ここに関わってきます。

そしてそれが一発でわかるだけの掴みを準備していただけに、オズワルドさんの漫才はスルッと受け入れることができたのではないか、と思案します。

今年こそ優勝してください

私は彼らの優勝を今かいまかと待ち望んでいます。個人的には山の中でクマに遭遇した時の漫才なんてめちゃめちゃ面白いと思います。それもやっぱり畠中さんがキーになってどんどん頭のおかしい質問を投げかけると言うやりとりで笑わせに来る、超王道のしゃべくり漫才です。

数年前から「THE MANZAI」や「M-1グランプリ」ではコント仕立ての漫才や勢いばかりの漫才が増えたように感じます。確かにそれも面白いことは間違いありません。あくまで漫才の目的は見ている人を楽しませることなので極論「面白ければいい」と言うのも正解でしょう。

それでも私はオズワルドさんに代表されるしゃべくり漫才がやっぱ好きやねん。だからこそ彼らの漫才が天下を取る日を楽しみにしているのです。

彼らの益々の発展とご多幸をお祈りしております。

 

現場からは以上です。