いつの間にか「異世界転生」が当たり前になってるけど、なんで?

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日々の喧騒感に薄々嫌気がさしている豪雪、豪雪婦人です。余談ですが、自己紹介の時に豪雪と名乗るか豪雪婦人と名乗るかの間に何の境目もありません。気分です。

さて、あくまで感覚論なのですが、「異世界転生もの」って中々多いですよね。有名どころでいえば、「Re:ゼロから始める異世界生活」や「転生したらスライムだった件」、「この素晴らしい世界に祝福を!」などなど、上げだしたらきりがありません。

ちなみに他にはこんな感じです。

古くは「ナルニア国物語」なんかも異世界に転生(もしくは召喚や移動?)している話のうちの一つですが、そんなに古くから私たちはなにを異世界に望んでいるのでしょう?

異世界ものが作品として描かれる場合はいくつかパターンがあります。

1.そもそも舞台が異世界の場合

2.異世界の生き物が我々の世界に来る場合

3.我々が異世界に転移する場合

特に異世界転生ものは3番に含まれると思います。

ところで、異世界転生ものは最近かなり増えてきているように感じます。これは絶対数と言うより、昔と比べて増えているように「感じる」という次元でしかないです。しかし、「異世界転生トラック」などと言う極めて不思議な修飾語を持つ単語が生まれることを証左に、最近増加の傾向があると言うことができるのではないかと思います。

で、なぜこの1、2、3の中でも3が特別増えているのかについて掘り下げていきたいと思います。そのため、まずそれぞれの特徴を掴んだ上で3番に分類される物語がどういう立場に位置するかをみていきたいと思います。

舞台が異世界の場合:憧れが先行する夢のような世界

舞台が異世界のものは当然主人公も異世界の住民です。例えば「ドラゴンボール」は主人公やその仲間たちはとんでもな世界の生き物ですし、最近流行の「ウマ娘」はウマ娘という生き物が当然のように生活する世界であるので、ある意味異世界の話といえます。もっとわかりやすい例で言えば、「ハリーポッター」が最たる例でしょうか。

つまり、ここでの舞台は自分たちの常識とはかけ離れた存在や法則があるものです。

このような物語では私たちは「観測者」となり、その「現実離れした世界観」を楽しむことができます。魔法をで世界を救う主人公や必殺技で敵をなぎ倒す主人公、果ては2,400mを一瞬で走り去る女の子も、私たちのいる世界ではありえない存在です。

だからこそ、そのような世界に私たちは憧れますが、そもそも常識が違うため憧れるだけにとどまります。もちろんハリーポッターのように魔法を使えたら、と思うことはありますが、それ以上の共感というのは世界に望むことはできなさそうです。

異世界から転生の場合:自分たちの世界に憧れを移し込める

舞台が私たちの世界でありながら、そこに異世界のいわば「異物」が紛れ込んでくる場合、主人公は私たちの世界の住人もしくは転生してきた異世界の住人のどちらかになります。

例えば、「ドラえもん」は未来の世界という異世界からドラえもんというなんでもアイテムに頼る猫型ロボットが現れるわけですが、この場合は主人公はのび太でしょう。ですから、主人公は私たちの世界の住人です。また、「テルマエ・ロマエ」は古代ローマからローマ人が転移してきて彼の目線で物語が語られるので、異世界の住人が主人公と言えます。

さて、前者の場合は私たちの世界にきた異世界の存在が私たちの世界に憧れを与えてくれます。例えば好きな女の子と遊びに行ける道具を出してくれたり、美味しい饅頭を無限に食べる方法を教えてくれたり。そういう自分の憧れをオーバーテクノロジー的に解決してくれるのがこの手の作品です。

このような作品は私たちが普段抱えるフラストレーションを解消してくれる、そんな爽快感があります。ちなみに全く逆転しているのが「キテレツ大百科」でしょうか。

対して後者の場合は異世界の主人公たちが「私たちの世界に順応する」までの過程を見るのが楽しいとも言えます。個人的には「聖お兄さん」なんかもそうだと思うのですが、立川で生活するブッダとイエスと言う怒る人は怒りそうな作品です。彼らは私たちの世界に慣れようとしつつ、自分の世界とのギャップに合います。ある種そのギャップこそ私たちが面白さを感じるところなのではないかなと思います。

と言うところで、私たちの世界と言う大前提があるからこそ、その異世界の存在がうまくギャップを生み出してくれることでチグハグ加減が生まれ、その中に面白さや爽快感が生まれるのがこのパターンの作品ではないかな、と考えます。

異世界に転生する場合:主人公に共感しつつ、世界観に浸れる

さて、前段の話はここまで。いよいよ異世界転生ものです。

特に私がよくみていたのは「このすば(この素晴らしい世界に祝福を!)」ですが、この手の話の場合、主人公は私たちのように問題を抱えていたりこの自分の生活している世界に不満を抱えていたりするものです。

そんな主人公がこの世の中を捨てて新しい世界に行って無双する・・・。そこにやはり私たちはいくつかの爽快感を覚えます。ここでは2つ挙げてみます。

1つには私たちが存在するこの世界の常識に縛られないところ。例えば普段生活していて煩わしい仕事や学校、あるいは世知辛くいくのであれば税金なんかもそのうちの一つでしょう。こういったものはかなりの確率でなくなります。そのかわりにその世界特有の仕事や勉強などが待っていることでしょうが、その非日常感こそ私たちが異世界転生者にハマる要素のひとつかもしれません。

2つ目に、異世界転生する際、その多くの場合で主人公は何か特別なスキルをもらえます。あるいは私たちの世界で当然のようにできることが新しい世界では重宝されるスキルだったりします。そのような特別感や無双感に私たちは爽快感を得るため、このような異世界転生ものは好まれるのでしょうか。

他にもあるかもしれませんが、この二つが大きい理由なんじゃないかな、と思っています。

3パターンでなぜ異世界転生なのか

この異世界転生ものについては、特に「主人公に共感でき、憧れの世界に行ける」と言う点から他のパターンとは異なるのではないかな、と感じています。

この場合に読み手の考えとして考えられるのが「自分の世界に飽きている」「自分の世界に不満がある」と言うところでしょうか。それこそ、今私たちが生きている社会が最も素晴らしいのだ、と感じている人が少なければ少ないほど、この手の作品が増えるでしょう。このストレス社会と言われる世の中ではそれも必然だと言う風にすら感じます。

と言うことは、今後もこの手の異世界転生ものの作品は増えていくかもしれませんが、ただある意味今あげた条件に当てはまる作品は飽和しているとも言えます。

では今後どのような異世界ものがあり得るのか。

可能性としては「過去に転生する」と言う転生ものが増えてきても面白いかな、と思います。

これは読み手が「40代」で「ストレス社会にやられ」「懐かしさに耽りたい」人を対象にしている案です。毎日必死に働いているんだけど、たまには癒しが欲しいと言う人も少なくないと思います。そんな癒しは単なる異世界でもいいのですが、自分が子供の頃の生活というのは多くの人にとって失いたくない、できることなら帰っていきたい生活ではないでしょうか。

そんな世界に没入できる、しかも朝の通勤時間でサクっとスマホで5分ぐらいで見ることができるなら、それはそこそこ面白いものになるのではないかな、と思います。

さあ、異世界転生はおそらく今後も増えていきますが、ここから少しずつ形態を変えていくのではないでしょうか。どのように変化していくか、私も少し楽しみです。

それでは。

現場からは以上です。