【バズ THE マイク !】他人の真似でバズることは果たして幸せになれるのであろうかということを問うてくる漫画【ジャンプ+】

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かなり長いこと引きこもり生活をしていてそろそろ心が痛い豪雪婦人でございます。というかお金を稼いで色々やりたいことあるからそろそろ社畜に戻りたい。前の会社以外に。切に。

先週の水曜日にジャンプ+に掲載された読み切り漫画「バズ THE マイク!」もう読まれましたか?

なかなかに面白かったのでご紹介がてら、掘り下げてみていこうと思います。

まずは読んでください。とにかく。

売れない路上シンガー・みずきが、似ていると言われたアイドル・ゆきりのカバーソングを歌ったら、鬼バズリ。そっくり有名配信者に。ある日、ゆきりのマネージャーに本物と…
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読みましたね?いつも通り以下はネタバレ注意の内容なのでまず漫画を先に読んでくださいね。

注目もされない音楽系YouTuberがアイドルの真似をしてみた

主人公は「平町みずき」という20歳の売れない路上シンガー。YouTubeで生配信をしても同時接続(生配信を視聴している人数)は良くて数十人。ファンはいるもののなかなか結果に結びつかない。

そんなみずきはもともと自作の曲がメインであったように思われます。流行りの曲を追いかけたりすることもないようで、最近のアイドル事情も知らない様子でした。

ある生配信の最中にコメントで、アイドルグループ「VEXY」のセンター「ゆきり」に似てると言われます。自分でも調べてみると確かに真似できそう。そこでVEXYの新曲を弾き語りしてみるとこれがバズってしまいます。

そこから彼女は高評価の数字や再生数に魅力を感じ、求められる平町みずきを演じ始めます。自作の曲を全て消し、ゆきりに似ているYouTuberとして活動していきます。

しかしそれだけでは視聴者は飽きるもの。さらに調子に乗った視聴者はアンチコメントでみずきの心を追い込んでいきます。募ったイライラをぶつけるように、みずきは「引退ドッキリ」を画策するのです。

その頃VEXYのゆきりは引退しようとしていた

みずきが引退ドッキリをしていた一方で、本物の「VEXY」のゆきりは本当に引退をしようと考えていました。理由はアイドルという自由のない生活に嫌気がさしていたから。プロデューサーも勢いに任せてゆきりに「辞めたければ辞めろ」ときつい口調で返してしまいます。その結果、ゆきりは本当に事務所から出ていきます。

しかし、実は「VEXY」は全国ツアーを控えており、今ゆきりがいなくなることは、本当はかなりの大打撃になってしまう。悩んでいるプロデューサーがふとSNSをみると、みずきによる引退ドッキリの影響でつい数分前に出て行ったゆきりの引退がトレンド入りしていました。

つい、本人と入れ替わってみた

ゆきりの引退ドッキリ動画はタイトルが「VEXY脱退についてファンの皆様へ」という過激なものであったためか、すぐに炎上してしまいます。そしてその影響か彼女のSNSには「VEXY」のプロデューサーからダイレクトメルが届き、事務所まで来い、と言われます。

名誉毀損で訴えられるものと思っていたみずきでしたが、プロデューサーから打診されたのは引退しようとしていたゆきりの代わりに全国ツアーに出てほしいというもの。みずきもその提案を受け入れます。ただ、心のどこかで動画のコメントにあった「人の曲歌って人の真似してちやほやされて」という言葉が頭によぎります。

その後の全国ツアーの初公演は大成功。ゆきりとみずきが入れ替わっていることは誰にも気づかれることはありませんでした。会場の解体中、みずきはゆきりの格好で「自分の曲」を歌います。それはかつて彼女が歌いたくて作った本当の自分の曲。弾き終わってからか、彼女は「自分自身」の無力さを痛感します。

端でその姿を見ていたプロデューサーはみずきに声をかけますが、みずきはすぐに「ゆきり」に戻ります。

時をほぼ同じくして、プロデューサーは本物の「ゆきり」と再会します。ゆきりは自分が憧れていた一般人の生活をしていても何の活力も見出せないことをプロデューサーに打ち明けます。ひっそりと「ゆきり」が復活したのです。

時がたち、全国ツアーの最終日。プロデューサーからセットリストの変更が通達されます。ゆきりの未発表のソロ曲を最後に演奏するというもの。それはみずきの歌で、本当に「ゆきり」として歌う最後の曲。全国ツアーの最後にほんの一瞬だけ、「みずき」を世の中に見てもらうことができたのです。

鳴り響くアンコールの中、みずきとゆきりは再び入れ替わります。

自分の力で戦いたくなった

みずきはおそらくゆきりの真似をした配信もやめてしまったのでしょう。再び自分自身の名前で、自分自身の歌でライブハウスなどを通して歌っています。

ある日みずきのもとに「VEXY」のゆきりとプロデューサーが訪れます。用件は、「VEXY」の曲を作ってくれというもの。全国ツアーの最終日に歌ったみずきの歌も、ゆきりの曲として歌いたいというものだったり、一方で平町みずき自信をデビューさせたりと、プロデューサーは色々と画策していたようです。

プロデューサーはあの会場のバラシの最中にみずきが歌った一曲で、「平町みずき」をデビューさせることを決めていたのです。

また時がたち、野外イベントでは「VEXY」が会場を沸かせています。場面がかわり次のパフォーマーに映し出される「平町みずき」の名前。ゆきりから渡されるバトン。

みずきは自分の力で舞台に立てるようになりました。

これがこの物語のあらすじです。

考察1:あのまま「ゆきり」として生活するのは幸せだったか

さて、ここからは勝手にifストーリーを考察していきます。

まず一つ目は

あのまま「ゆきり」として生活するのは幸せだったか

というもの。

全国ツアーの最終日、ゆきりとみずきはもう一度入れ替わり、もともとの役割に帰っていきました。そこでもしも、ゆきりが「VEXY」に戻ることがなければ、どうなっていたのでしょう。

まずはゆきりについてですが、彼女はおそらく何も問題がなく一般人としての生活を謳歌するのではないでしょうか。大前提としてゆきりにアイドルへ戻る意思がなく一般人として生活するのでゆきりとみずきが入れ替わったままだったら、というものですが、その場合にはゆきりはアイドルというものに対して未練は持っていないのですから、そのままいわゆる「普通」の生活を続けただろうと思います。

一方でみずきについて。みずきもゆきりとして幸せな生活を送るのだろうな、と思います。そしてそれはみずきにとっても幸せなことかもしれません。例えばみずきとして自分の曲を出せないことに悩むだろうか、とも思いますが、みずきはゆきりになりすました時点でその課題とは向き合い続けています。その上でゆきりと入れ替わっているので、最終的には吹っ切れるでしょう。

もっと言えば、みずきの作った曲を歌いたければ「ゆきりのソロ曲」として本当に出してしまえば曲自体は世の中に出せるので、曲を世の中に出したいという欲求自体はみずきがゆきりとして活動し続けていても解消されます。

みずきについてはもう一つネックになるものがあります。それは彼女が気にしていた「他人の真似をしてちやほやされて」というコメントについて。確かにみずきは悩んでいました。とは言え、自分の曲を出せないという悩み同様にいずれは吹っ切れるものでしょう。あるいはゆきりと入れ替わることを選択した時点で全てをふっきっていたのかもしれません。彼女は他人の真似をすることを受け入れていくでしょう。

ということから、もしゆきりとみずきが入れ替わり続けていたとしても、お互いに幸せな生活を続けられていたと考えられます。

考察2:「ゆきり」に似てなかったら平町みずきはどうなってたか

もう一点考察していきます。それは、みずきがゆきりに似ていなかったら。最初の動画投稿の物真似動画に発展しなかったら、というものです。

これは物語の根幹をつぶす考察になるのですが、おそらくみずきの幸せはなかなか掴めなかったのではないでしょうか。あのままであれば、みずきが輝くためには動画が他の方向でバズってしまうか、路上ライブで才能を見染められるかどうかなど、かなり限られたチャンスになります。

そうすると、根気よく続けてその薄いチャンスをものにできるか、もしくはギターをおいてしまうかのどちらかの未来が待っています。

どちらの場合にせよ、ゆきりと入れ替わったときほどのスムーズな成功というのはなかっただろうと考えられます。

結論:チャンスに飛びつけるかどうかが全てなのかもしれない

「バズ THE マイク!」はみずきがゆきりの物真似をしたことから全てが始まります。最初は承認欲求を満たすための些細な挑戦だったかもしれません。しかしその時にみずきが「こんなの自分には無理だ」と自分の限界を定めて何もしなかったら、何とも最後のソロデビューも叶わなかったのかもしれません。

ゆきりに似ていたことが全てではなく、ゆきりに似ていたのを利用して物真似に挑戦したことが彼女を成功させたのです。

この物語はみずきの成長譚だけではなく、冒険譚でもあるのではないかと思います。

そんな冒険の末自分の夢を掴んでいく姿を見ていて、私自身も何かを成し遂げるためにみずきのように何かに挑戦していかなければな、というふうに感じました。

まずは職を探さなければ。

それでは。

現場からは以上です。