アドマイヤベガという馬をご存知でしょうか。1999年に東京優駿(ダービー)を勝ち抜いた馬で、サンデーサイレンス産駒です。そしてウマ娘にもなっており、ゲームでは今年の2月に実装されています。
ウマ娘では度々語られるアドマイヤベガの「あの子」の存在。競馬ファンであれば皆さんがご存知の慣習によって引き離された彼女の半身のことです。今更でも、私は語りたいのです。
「双子の競走馬は大成しない」
さて、アドマイヤベガについて語る前に現実の「馬」というものを考える必要があります。
馬というものは本来人間のように「単胎動物」と呼ばれる生き物です。これはざっくりいうと「一回の出産で一頭を生むようにできている動物」です。逆の存在としては、「多胎動物」として、ネズミや豚が挙げられます。
単胎動物は母体が一頭を生むようにできています。言い換えれば、二頭以上を生むことを前提としていないということです。
馬は特にその傾向が強い生き物です。上のJRAのブログのデータを参考にすると、双子が無事に生まれる確率はたったの「13%」。馬という生き物にとって、双子というのはもしかすると、「かなりの異常」のかもしれません。
しかし馬の双子の受胎率というのは決して低くありません。再度JRAのブログを参考にすると、6頭に1頭は双子を受胎するとのこと。なので、あり得てはいけないといいつつ、かなり高い頻度で発生するのです。
しかし、ただ双子を見殺しにすることはできません。だからこそ「双子と判明した時、片方の胚を潰す」のです。そして一頭を育てることになるのです。
引き離された「双子星」
話をアドマイヤベガに戻します。アドマイヤベガは双子でした。しかし上述の通り双子のうち片方を救うため、片方の胚は潰されました。それがゲームの中でも出てくる、「あの子」の正体。彼女の妹なのです。妹は生まれることもなく、いなくなったのでした。
ゲームの中では、アドマイヤベガはこの失われた妹に対してかなり引け目を感じています。
一番にそのことを感じたのは彼女が初めて走った「ポニーステークス」の時。母親にねだってでも出たレースで、その妹の存在を肌に染みて感じたのです。そこから彼女は妹が誰よりも走りたかったのだろうと感じることになります。そして、彼女は妹に勝利を捧げ続けるためにレースに出場し、ストイックに勝利を目指し続けます。
アドマイヤベガは「妹こそが本来生まれてくるべきだった」と、ずっとずっと、自分を捨て妹のために一人戦い続けるのです。
ところで「ディオスクロイ」とは
そんなアドマイヤベガの固有スキルは「ディオスクロイの流星」です。
上の通り、ディオスクロイとは、ギリシア神話の双子の神のことです。ポルックスとカストルの二人のことですが、この双子もカストルの死により分かたれています。そしてポルックスは二人で一緒にいられるように掛け合いました。そして一日置きに神の世界と死後の世界を行き来することで二人は一緒にいられることになりました。そしてこの双子こそ、今でも双子座として知られることになったのです。
この境遇はアドマイヤベガとかなりに通ったものになっています。星の名を冠し、双子を大事にしたアドマイヤベガ。だからこそ双子座がふさわしいと言えるのではないでしょうか。
星になった妹のためにも今でも走り続けるアドマイヤベガでした。
ちなみに本物の競走馬のアドマイヤベガはすでに双子に会いに行きました。ウマ娘でハマっただけの私がいうことではないかもしれませんが、二人が仲良く暮らしていることを心から願います。
現場からは以上です。