【ジャンプ+】「マイハートドライバー」の面白さは「主人公」と「お嬢様」の異質さが生み出す化学反応による課題の乗り越え方

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東京に引っ越して一週間が経ちました。その間に世間は大きく変化していき、秋葉原のアトレはウマ娘から遊戯王へと姿を変えました。豪雪婦人です。

さて、今回はジャンプ+の読み切り「マイハートドライバー」についてです。

名家に仕える家系で育った佑は嫌々ながらも主である蓮城寺家お嬢様の運転手として働くことに。そんなお嬢様とは気難しい性格もあり、距離が縮まらない日々を過ごしていたの…
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読みましたね?

この漫画のクライマックスは「周りを拒絶するお嬢様の隙間を見つけ、そこから心と笑顔を取り戻す」というモノです。このクライマックスに至るまでに発生したお嬢様と主人公佐武のそれぞれの課題と乗り越え方をザクッと分解します。

佐武の課題:お嬢様の心を開かせたい

主人公の佐武佑は実家が蓮城寺家に仕える家だったが故に、他人のために働くことがいやだと感じていました。

そんな彼が日銭を稼ぐために蓮城寺家で働くことになります。役割は「蓮城寺絢乃」お嬢様の運転手。

少しでも楽しもうと佐武はお嬢様と友達感覚で緩く仕事をやっていきたいと思いますが、彼女は佐武を拒絶します。ただ黙々と運転してくれていれば問題ない、そんなふうに接していきます。

しかし佐武はそれでもお嬢様と打ち解けようとして色々試行錯誤します。情報収集したり、めげずに話しかけたり・・・。そこで、お嬢様に腹違いの兄弟がいることや、かつて懐いていた高雄という運転手がいたことを知ります。

お嬢様の課題:孤独を乗り越えられない

ここで時は変わってお嬢様目線。実は彼女は蓮城寺家ではあるものの、母親はすでに死んでおり、今の母親・弟は血の繋がりのない家族。それだけでなく父親も母親の命日を忘れるほど、今の家族にべったりであり、どこか疎外感を感じている。

しかしながら、そんな中でも彼女が心を開ける相手が前述の高雄という存在でした。彼はお嬢様の実母の命日を覚えており、一緒に献花をしてくれたのです。

特に高雄の言葉はお嬢様には強く響いたのではないでしょうか。

「あなただけはまだここにいて下さいよ」

これがお嬢様を肯定する存在としての発言なのです。それゆえ、彼がいることでお嬢様は自分もそこにいていいんだという思いを抱けたのではないでしょうか。

そんな彼も気づけばいなくなっており、お嬢様はどんどん孤独感に苛まれていきます。それゆえ、佐武に対しても過度な期待をせず、ある程度つっぱねた対応をしてしまったのです。

空気の読めない佐武がお嬢様のために高雄を見つける

佐武はお嬢様のために、高雄を見つけました。

クライマックスのシーンでは二人が高雄に会いにいきます。

ここで。

お嬢様はおそらく自分一人ではどんなに高雄に会いたくても探そうとしなかったでしょう。そんなもんだと割り切っているようなタイプなので、自分から厄介ごとには首を突っ込まないような、そんな気がします。

そしてもし彼女のドライバーが他の佐武家の人間のように言われたことだけをこなすだけの「マニュアル人間」であれば、わざわざ高雄を見つけるなどという面倒なことはしなかったでしょう。

つまり、佐武佑という圧倒的異分子が自分勝手なことをして初めてお嬢様の孤独感をうち破ろうということになるのです。

その結果、彼女は高雄に出会い、結果はどうあれ笑顔や感情を取り戻すことに成功したのです。

空気を読むのも大事だけど、やりたいこともやらなくちゃ?

この話を読んで、やっぱり主人公の縛られない行動が誰かを変えたんだな、って思います。常識的に考えるとそんなことしちゃいけない、っていうことを破っていますから。それは佐武家の常識である「主人の命は絶対」というものです。

しかしそれを守って彼女のためになるとわかっていながら、あるいは彼女のためになるかはわからないけどやるべきだと感じながら、高雄を探さなかったら、お嬢様はこの先もずっと孤独に悩まされどうなっていたかはわかりません。

そうではなく、自分のやるべきだと感じることを、ある種周りの目を気にせずやることができれば、新しい何かを生み出すことができるのでしょう。

そういった空気の読めない行動が現実の常識を打ち破り、新たな価値を創造するという点で、この物語に面白さを感じたのではないかな、と私は推測します。

堅苦しくなりましたが、私はこの漫画の面白さの一つはここだと思っています。

取り留めもないですが、

現場からは以上です。