【芝浜】面白いものを描くために「面白いものを分解する」【ストーリープロッター】

2021年8月23日
記事

さて、豪雪婦人です。

久しぶりにお盆休みが明け、自分の部屋に帰ってくると死ぬほど部屋が汚いので来週末には掃除しようと心に決めたけど、今回もダメそうな私です。

 

皆さんは好きな物語があるでしょう。そして、中には物語を描く人もいるのではないでしょうか。

かつて私もその真似事をしていた時期があります。そのジャンルはもう描くことはありませんが、少なくともそのときの反省が一つあります。

それは、描きたいことをただただ描いていたこと。

先に言っておきますが、悪いことではないです。

 

だけど、そのままでは自分の実力が伸びることはないでしょう。

というわけで、私は今回「なぜ自分がその作品を面白いと感じるか」ということに注目してみたいと思います。

「ストーリープロッター」で要素ごとに抜き出してみる

今回使うのはこのアプリ。

「ストーリープロッター」

このアプリは ・小説 ・マンガ ・演劇 ・映画 ・ドラマ ・二次創作 ・TRPG シナリオ ・台本 などの脚本のプロット作りをサポートする強力なアプリです 以下…
apps.apple.com

これは本来「物語を要素ごとに組み上げていくため、その要素ごとに組み上げていく」というものです。

中身はこんな感じです。

こんな感じにプロット帳があり、その中に要素を加えていくような感じ。

そのプロット帳の中身はこちら。

既に中身が入っていますが、このように物語をこう進めると王道なルートです、というのが既に書かれているのでこれに沿って書いていくだけでまともなストーリールートが描けるものです。

2年前に出逢いたかった…。

 

ちなみにこれだけで中身が分かる人は私のファンとして認めましょう。

過去にTwitterで好きな物語としてあげたことのある話です。ただし、オチに関しては少し削っておりますが。

ちなみに最高のオチは書いていないのに、この完成度の物語なのはさすがとしか言えないです。何百年も愛される物語の完成度とは、このレベルのものなのですね。

 

答えは落語の「芝浜」です。

お酒にだらしない旦那が大金の入った財布を拾ってしまう。それを頼りに飲み食いしてしまうと、その財布を見つけたのが夢だったことになる。借金が残ってしまうも奥さんの言葉でお酒を絶ってしっかり仕事に身を入れるようになる。そうして幸せを掴む。

というあらすじです。

 

さて、この物語を分解しましょう。

欠点のある主人公

ここでは「オープニング」から「キャラや関係性の紹介」まで。

まず主人公は「毎日飲んで寝ての繰り返し」で仕事をちゃんとしていなかったという欠点があります。

またかつては「普通に稼ぐ人間だった」のに働かなくなった。また、結婚して10年(10年は私が仮に決めています)付き添っている奥さんがいますが、働かないことで「内心で不安を感じさせている」という欠点があります。

さて、今回の欠点は二つ効用があると見られます。

一つ目はよくある手法で「欠点を持たせて親近感を持たせる」こと。

二つ目は「主人公が正しい道に進んだことを示す」こと。

 

一つ目に関して、どんな物語であっても欠点のないキャラクターに親近感を持つ人は少ないと思います。

仮に欠点がなければ「完全無欠の最強超人」になるということですが、そんな人間この世の中にいるでしょうか?逆に「お酒にだらしない」「ちゃんと働かない」「寝てばかり」というのは誰にでもあることです。

落語というのは基本的に「人間の普段の生活から一点を切り抜いて物語にする」というものなので、親近感を覚えさせるということはかなり重要なファクターになり得ます。

その親近感を持たせるためにこの欠点は重要であります。

 

二つ目についてはこの後出てくるのですが、「主人公は欠点を乗り越えて人生が良くなる」というオチがつきます。

この時代は「勧善懲悪」の物語が好まれた時代ですので、最終的には働き者になって幸せをつかみました、めでたしめでたし、というお話が綺麗なわけです。

だからこそ、お酒に染まっていたよくない人生からある事件をきっかけに厚生する。そういうストーリー構成にするため、主人公を「酒に溺れるどうしようもないキャラクター」にしたのだと考えます。

主人公が変わるきっかけの事件

次に「事件発生」から「問題の深刻化、表面化」までです。

この事件は「大金を手にしたと思ったらそれは夢で、借金だけ残ってしまう」というものです。

 

ある日仕事場の魚河岸にいく途中、芝の浜というところで財布を拾います

その中にはしばらく仕事をしなくても十分に遊んで暮らせるだけの大金が入っていました

それを家に持って帰って、これだけのお金があるのだからいくら遊んでも大丈夫と思ってしまいます。

そこで主人公は奥さんに仲間を呼ばせ、酒や御馳走を頼んでは飲み食いしまくります

 

さて、そこで主人公は目を覚まします。

なんと、財布を拾ったのは夢だったということを奥さんに告げられます。

そんな財布はない、でもかなり上機嫌で帰ってきて仲間を呼ぶものだから仕方なくお酒を頼んでご馳走を用意した。

 

そこで主人公はゾッとします。お金がないのにかなり贅沢をしてしまいました。つまり借金をしてしまっているのです。主人公はもうどうしようもないと思って、奥さんに心中を言い寄ります。

 

この事件、起こったことは「楽をして人生を良くする方法が目の前に降ってきた」というものです。

 

良くあるビジネス書でも「〇〇するだけで簡単に稼げる!」などと謳っているのをよく見かけますが、それと同じような状況です。

それに流されると「楽だけど、そんなうまい話はない」のです。だけど、人間は簡単にその手段に流されてしまいます。この主人公もこの時はうまい話に流されてしまうのです

 

しかし、翌日目を開けると、そんなものありません。

そう、この話も多分にもれず「そんなうまい話はない」のです。

夢の中で拾ったお財布で大量の飲み食い、残ったのは借金だけ。

さあ、どうする?となったときに主人公はもう諦めて「奥さんと心中を図ってしまう」のです。

これもよくある話で、うまい話に乗ったはいいけどそれは結局騙されていただけ。そのことに絶望して色々諦めてしまうのです。

 

ここがこの話の大きな壁です。

つまり「うまい話に乗って大金を失ってしまった」というところです。

だから、ここからどうするか。

変わった結果、好転した人生

最後に「気づきと決断と成長」から「エンディング」まで。

さて、奥様はしっかりしております。

「あんたが頑張ったらそんな借金すぐ返せる」と主人公にハッパをかけます。

まだまだ自信のない主人公。だけど、それでも主人公を信じ続ける奥さんは励まし続けます。

その声に胸を打たれた主人公は一からやり直すことを決意。早速魚河岸に向かって働き始めます。そしてお酒をキッパリやめて働くことにしっかりと身を入れるようになりました。

 

さて、それから3年後(Wiki調べ申し訳ない)には立派な店を構えることができました。借金もすっかりなくなってしまい、食って寝ての主人公は見る影もないほど成長していました。

 

落語ではもう一悶着あるのですが、そこは割愛。語り始めると長くなりますので別の機会に。

 

 

このことから、主人公は「選択と実行で新しい自分・幸せを掴んだ」と言えます。

この主人公は「お酒」という自分の快楽を失いしっかりと仕事に身を入れることを選びました。

その結果、それまでとは打って変わって素晴らしい成功を得ました。

 

それまでと言って仕舞えばそれまでなのですが、この物語で人々の心を打つものがあるとすれば、「欠点を乗り越えて努力することで成功が掴める」ということです。

最初に伝えた通り、主人公の持つ欠点というのは「親近感」を持たせるためのいわば舞台装置な訳です。

それゆえ、人々は主人公に自分を重ねるようになります。

主人公は物語の中でその欠点を乗り越え新しい自分になります。これは「自分も頑張れば彼のように成功できるのだ」という気持ちや「私と同じ境遇の人がこんなに頑張っているのか」という気持ちを呼び覚まします。

主人公と自分が重なっているほどに、自分の成功のように感じると思います。

だからこそ、彼の一つの成功に対して、中には爽快感を得る人もいるのではないでしょうか。

総括

さて、本題に戻ってこの物語が面白いと思える理由。

大きく二つにまとめられます。

・主人公に親近感を持たせる

乗り越えるべき壁を与え、しっかりと乗り越えている

の二点です。

 

おそらく他の物語にもかなりの確率で取り込まれている手法だと思います。

世界的に有名な話でも例えば「ハリーポッター」は実力はすごくとも親がいなかったり引き取り先でいじめられたりと恵まれただけの存在ではありません。そしてヴォルデモートという乗り越えるべき壁を与えています。さらに、シリーズ中でも様々な壁が登場し(死喰い人やヴォルデモート軍団など)それをしっかりと乗り越えています。

 

 

この事実は、これさえ守ればうまくストーリーが作れるとも言えますし、逆に言えばどれかが抜けると物足りなくなる、とも言えます。

さて、長くなりましたが、人間の感情というのは、しっかりと見極めていけばある程度までは探れます。

それ以上になると、もっと見つめ続ける必要が出るかもしれません。

 

 

それに従って、しっかりと研究しなければなりませんね。私も活動にあたって、皆様の感情を動かせるように、感動させられるようにまずは自分の感情を研究して行こうかなと思います。 

 

 

できるかな、飽きるかもな。

 

まあ、なるようになるか。

 

 

 

今回はこんな感じで。 

現場からは以上です。